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「スポーツ×IT」 時代の最先端を行くNTTグループの協賛活動2選
情報技術の急激な発展によって高度情報化社会となった現在の世界では、ITが私たちの生活のあらゆる分野で活用されています。そしてその「IT化」の波はスポーツにも及んでいることを皆さんはご存じでしょうか?
文部科学省は「第3期スポーツ計画(令和4年制定)」において「今後5年間に総合的かつ計画的に取り組む12の施策」の一つとして「スポーツ界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」を挙げています。具体的には先端技術を活用したスポーツ実施の在り方の拡大やデジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの創出を目標に掲げています。
このようにスポーツ界におけるテクノロジーの活用は近年急速に発展してきた分野であり、また今後の成長が期待されている分野でもあります。そこで本コラムでは企業の協賛活動における「スポーツ×IT」に注目して、NTTグループが取り組んでいるテクノロジーを活用した活動を2つご紹介します。
①【全英オープンゴルフ×NTTデータ】
NTTデータは2013年の第142回大会以来、全英オープンゴルフのIT分野のオフィシャルパトロンとして、自社の強みを生かした様々な活動を行っています。ここではまず両者の基本情報について少しご説明した後、実際にNTTデータが全英オープンゴルフにおいて取り組んでいる活動をご紹介します。
NTTデータ
NTTデータは「システムインテグレーター」という職種に分類されます。システムインテグレーターとは社会に必要な様々な仕組みをITを用いて構築する情報サービス企業のことをいいます。上に書いたようにITは人々の生活のあらゆる場面で活用されているため、システムインテグレーターも幅広いビジネス領域で活躍していることがこの職業の特徴です。
全英オープンゴルフ
全英オープンゴルフは1860年に創設された歴史あるゴルフトーナメントで、英語での正式名称は”The Open Championship”です。イギリスのゴルフ競技団体R&Aが主催しており、毎年7月に開催されます。
NTTデータの具体的な取り組み
NTTデータはパトロンとなった2013年以来、ITを活用して様々な活動を行っています。
NTT DATA WALL
まず、2014年に手掛けたのが各会場内に設置される巨大なデジタルサイネージ「NTT DATA WALL」です。「NTT DATA WALL」では各選手のライブ映像や位置情報などをスクリーンに表示しており、そのスクリーンの巨大さは会場で圧倒的な存在感を放っています。
AI技術を用いた3つのサービス
2014年にNTT DATA WALLを導入した後、NTTデータは歴史あるゴルフトーナメントに対するファンの興味と興奮をさらに高めるために2019年にAI(人工知能)技術を活用した3つの新たなサービスを導入しました。
まず1つ目は “The Open Playback”(全英オープンゴルフ 映像集) です。このサービスは会場内の特設スペースにおいて、特定の選手、ガッツポーズ集、盛り上がったシーン集など様々な切り口で編集された中継映像をタブレットなどで楽しんでもらうものです。このサービスにはAI技術を活用した、生中継映像に自動でタグ付けする映像解析技術が用いられています。この技術を用いることで映像編集者は効率的かつ迅速に様々なテーマの映像集を作成できるようになりました。
続いては “Highlight generated by AI”(AIハイライト集)です。このサービスは中継映像をAI分析した結果をもとに、象徴的なシーンを切り取ったハイライト映像を NTT DATA WALL で提供するものです。このサービスを可能にしたのは中継映像の選手の動きを解析してショットの種類やガッツポーズの瞬間を自動で抽出するAI技術です。このようにして作られ、巨大スクリーンで放映されたハイライト映像によって、来場者はその日の象徴的なシーンを知ることができます。
3つ目は “Analysis to Spectator Reactions to Shots” (観客の盛り上がりランキング) です。このサービスは NTT DATA WALL 前で中継映像を見ている来場者の映像を表情分析エンジンを用いて分析し、匿名化したスコア情報を取得します。そのスコア情報をもとに観客の盛り上がりを分析し、各日の盛り上がったシーンを NTT DATA WALL 上にランキング形式で表示していくものです。
デジタルツイン
そして、NTTデータが2022年大会から新たに導入したのがデジタルツインです。デジタルツインとは現実世界で収集したデータを、まるで双子であるかのようにコンピューター上で再現する技術のことです。NTTデータは大会期間中の全選手のボールポジショニングデータを3Dマップ上にプロットしました。ここではこのサービス実現のための技術的課題、そして得たデータの活用方法についてご紹介します。
正確なポジションデータの取得
デジタルツインの実現における大きな困難の一つが正確なポジションデータの取得でした。必要なポジションデータはプレイヤーの位置とボールの落下地点の2つでしたが、後者はどこに落下するかわからないため、リアルタイムで情報を取得するには困難が伴いました。そこでNTTデータは産業用カメラとレーザー距離計を用いて計240人で計測を行いました。その結果、打たれたボールを20秒以内で約2cm以下の誤差で追跡することが可能になりました。
ポジションデータの活用
NTTデータは取得したポジションデータを2つのサービスに活用しました。1つ目は shot view とリーダーボードです。これらに全選手のボールポジションをリアルタイムで3Dマップ上にプロットすることで、利用者はすべての選手、ショット、ホールをリアルタイムに確認でき、歴史あるトーナメントをより楽しむことが可能になりました。

shotview画像イメージ(NTTデータ「DATA INSIGHT」より)
2つ目は”Clip Tag” という動画サービスです。これは取得したポジショニングデータを活用して、各選手の1ホールごとのショットを動画の形で公式サイトや NTT DATA WALL で公開するというサービスです。これによって海岸線や建物、低木や芝の種類がすべて正確に再現されたコース上のカップまでの道筋を、臨場感あふれるボール視点で楽しむことができるようになりました。
NTTデータのこれらの取り組み、特に2022年大会から導入したデジタルツインはゴルフの楽しみ方を大きく広げました。実際に来場している人だけでなく、スマホやタブレットを通して大会を楽しんでいる人も shot view や Clip Tag を通して現地にいる人が感じている臨場感や興奮、熱狂をより身近に感じることができるようになりました。今後もVR(仮想現実)の開発などで、画面を通したスポーツの楽しみ方が増えていくことが期待されます。
②【鹿島アントラーズ×NTTドコモ】
NTTドコモは2019年から鹿島アントラーズとクラブオフィシャルスポンサー契約を結び、様々な分野で協力して新しい取り組みを推進していくことを発表しています。上と同様に、まずは両者の基本情報をご説明した後、具体的にどの分野で協業を推進していくのか、そして現在どのような取り組みをしているのかをご紹介します。
NTTドコモ
NTTドコモは携帯電話サービスを中心とした通信事業を主に展開していて、最近ではテクノロジーを活用して生活を豊かにするためのスマートライフ事業も展開しています。
鹿島アントラーズ
鹿島アントラーズは茨城県の鹿島市を中心とする鹿行地域をホームタウンとするJリーグ所属のプロサッカーチームであり、Jリーグ発足時からリーグに所属する「オリジナル10」のひとつです。
両者が協業する4分野
NTTドコモと鹿島アントラーズはスポンサー契約締結時に「ホームタウン・フレンドリータウン活性化事業」、「スマートスタジアム」、「映像テクノロジー」、「デジタルマーケティング」の4分野で協業を推進していくことを発表しています。ここでは4分野のそれぞれについて簡単にご説明します。
①ホームタウン・フレンドリータウン活性化事業
NTTドコモが持つ地域創生に対する知見やICTテクノロジーを活用してスポーツをきっかけとしたホームタウン・フレンドリータウンの活性化を目指しています。
②スマートスタジアム
NTTドコモの技術やサービスを活用してスタジアムの通信環境を整備し、完全キャッシュレス化や電子チケット、AIカメラによる混雑状況の可視化などのスマートスタジアム化を推進することによって、観戦価値の向上を目指しています。
③映像テクノロジー
5Gの登場やAI技術の活用など、今後大きな成長が見込まれる映像分野において、新しいエンターテイメント体験の実現を目指しています。
④デジタルマーケティング
マーケティングテクノロジーや顧客サービスの開発に協力して取り組み、ファン・サポーターとのエンゲージメント向上や新規ファン獲得を目指しています。
実際の取り組み
ここではすでに行われている活動の例を2つ紹介します。
特別支援学校サッカービューイング
これは支援学校の教頭先生の「障がいや家庭の事情でスタジアムに足を運ぶことができない子供たちにアントラーズを身近に感じてもらい、サッカー観戦を楽しんでほしい」という思いから始まったプロジェクトで、Jリーグ社会連携プロジェクト「シャレン!」の取り組みとして行われました。NTTドコモは試合映像を学校の体育館に配信する際に、自社の情報通信技術を活用して高画質映像を配信し、プロジェクトの成功に貢献しました。
マルチアングル映像体験サービス
鹿島アントラーズは「映像テクノロジー」分野での取り組みとして、2022年9月からスタジアムでの観戦者向けに「マルチアングル映像体験サービス」を開始しました。これは専用サイトにアクセスすると、選手の表情が詳しくわかる「表情カメラ」やゴール裏からの撮影で戦術面からの観戦を楽しめる「戦術カメラ」など普段とは異なる視点でのサッカーを楽しむことができます。
NTTドコモはこのサービスにおいてライブ配信プラットフォームとライブ映像の視聴サイトをアントラーズに提供しており、1秒未満の低遅延ライブ映像配信の実現や視聴者が好きなアングルを選択できるマルチアングル機能などを可能にしています。
このようにNTTドコモと鹿島アントラーズはすでにいくつかの活動を行っており、地域社会への貢献や観戦価値向上を果たしています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はスポーツ界においてテクノロジーを活用した協賛活動を行っているNTTグループの事例2選をご紹介しました。スポーツ界におけるテクノロジーの活用方法は視聴者の観戦価値向上だけではなく、地域社会への貢献など別の領域につながっていることがおわかりいただけたと思います。また、今後も「スポーツ×IT」はますます成長することが予想される分野であり、今後の動きに注目が集まります。
【参考記事】
“全英オープンゴルフへの活用から見えてきたデジタルツインの大きな可能性”, NTTDATA,2023-02-08.
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2023/0208/(参照2023-04-25)
“全英オープンゴルフ会場にて選手やショットごとの映像集をAIで生成 ~さまざまな切り口から好みの映像集を選択して視聴可能に~”
NTTDATA,2019-07-17.https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2019/071701/(参照2023-04-25)
“株式会社NTTドコモがオフィシャルスポンサーに決定”,鹿島アントラーズ,2019-02-01.
https://www.antlers.co.jp/news/club_info/69721(参照2023-04-25)
“鹿島アントラーズの試合をリアルとマルチアングル映像の両方で楽しみながら観戦! “,NTTドコモ,2022-08-09.
https://www.docomo.ne.jp/binary/pdf/info/news_release/topics_220809_01.pdf(参照2023-04-25)
“特別支援学校サッカービューイング (鹿島アントラーズ)”,公益社団法人日本プロサッカーリーグ,
https://www.jleague.jp/docs/sharen//awards2020/work_report_08.pdf(参照2023-04-25)