部活動のこれまでとこれから ~地域移行とビジネス~

部活動のこれまでとこれから ~地域移行とビジネス~

投稿日:2023年8月1日 更新日:2023年8月2日

コラム
スポーツビジネス関連

はじめに

皆さんが学生時代に一番力をいれたことは何でしょうか。

勉強を頑張った人もいれば、学校行事に熱中した人もいると思いますが、やはり部活に全力を注いだという人が一番多いのではないでしょうか。そのくらい部活動は学校生活において大きな存在となっています。

しかし今、その部活が無くなり始めていることを皆さんはご存じでしょうか。

今年から中学校における「部活動の地域移行」が段階的に開始されました。これから徐々に「学校生活の部活動」が姿を消していくことが予想されます。

部活動のあり方が変化していく中で、実はまだまだ課題が山積しています。そこで、この記事では部活動の地域移行の背景や課題、そして課題解決に取り組んでいる民間企業についてご紹介します。

部活動の地域移行の現状やビジネスの可能性を知りたい方にとくにおすすめの記事となっています。ぜひ最後までご覧ください。

部活の地域移行の概要

スポーツ庁の「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」によると、2023年度から2025年度の3年間を改革推進機関として公立中学校の部活動の休日活動地域移行を可能なかぎり早期に実現させることを目指すとしています。また将来的には平日の部活動の移行も視野に入れるとしています。

教員の多忙化と少子化が背景

部活動の地域移行は主に教員の多忙化少子化を背景として進められています。

以前から教員の労働環境は問題になっており、文部科学省の教員勤務実態調査によると中学校教諭の約35%が「過労死ライン」を超えて勤務していることが明らかになりました。

そして、教諭の大きな負担の一つが部活動の顧問業務です。平日は練習の監督や指導を行い、休日は試合の引率などを行います。それに加えて、大会出場に係る各種作業を合わせるとかなりの時間を部活動に費やすこととなります。

また公立中学校では毎年異動があり、部活の顧問も少なくとも数年に一度入れ変わるためその競技の経験がない教員が顧問になるという「ミスマッチ」が発生することも少なくありません。そのような状況では、生徒が十分な指導を受けられないのに加えて、安全面の問題もあります。

以上で述べた問題の解消を目指し、教員の労働環境を改善する一策として部活動の地域移行が推進されています。

また、少子化による生徒数の減少も部活動の地域移行の契機となっています。

生徒数の減少により、全国の学校で人数不足を理由とした部活動の廃部・休部は急激に増加しています。特に野球やサッカー、ラグビーなど比較的多くの人数で行う運動部は人数不足によて学校単体ではチームを編成できないケースも多くなっています。それによって、進学する中学校に自分の入りたい部活が無いという生徒も少なくありません。

このような問題を解消し、生徒が自分のやりたいスポーツに取り組める環境を作るためにも部活の地域移行が進められています。

様々な移行の形

市町村ごとに規模や現在置かれている状況が異なるため、移行のプロセスやめざす理想形も異なっています。

地域スポーツ型クラブをはじめとした地域の外部団体に移行する形

「地域移行」という観点ではこのケースが一番目的を果たしているのではないでしょうか。教員の負担が軽減されるだけでなく、他の学校の生徒との交流も生まれます。

外部指導員が部活を指導する形

休日や顧問が練習を監督できないときに、外部から競技経験のある指導員を呼び、有償で指導を委任するケースです。多くの人が勤務中である平日の夕方などは指導を委任できる人材が少ないという現状があります。

教員が報酬を得つつ従来の形で指導を行う形

部活指導のモチベーションが高い教員が、あくまで「指導者」として報酬を得ながら従来通り活動するケースも見られます。部活動指導に対して対価を支払うことで、教員の労働時間に対する給料の少なさの是正を図るというアプローチ方法です。

様々な側面で課題が山積

全国で地域移行に向けた動きがみられる中で、それぞれの立場で課題が明らかになってきています。

増える保護者の負担

移行によって複数の面で保護者には従来よりも大きな負担を強いられそうです。今、一番顕在化しているのが移行先での活動費の負担です。現在の試行段階では自治体が県からの補助金などを利用して実施しているため、家庭の金銭的負担はほとんどないケースが多いですが、本格的に移行した場合、従来の部活よりも家庭の経済的負担が増加することが見込まれています。

また、増えるのは経済的負担だけではありません。休日に地域のスポーツセンターや総合体育館で活動するとなった場合、子供の送迎が必要になる場合があります。

自治体は企業版ふるさと納税や、民間企業の支援を受けて財源の確保に努めています。

地域の受け皿不足

その競技を指導できる外部人材が見つからないことも少なくありません。特に過疎地域ではこの問題が顕著です。そこで各自治体は大学生に協力を仰いだり、オンラインコミュニケーションツールを用いて遠方の指導者からの指導を受けたりするなど工夫を凝らしています。

教員と外部人材の連携が希薄

従来の部活動では、顧問教諭が生徒の学校生活での様子を知っているため、生徒の性格や生徒同士の関係などを把握しています。さらに顧問は「教育者」として技術指導の他に教育的な指導をためらいなく行える環境にありました。

しかし、地域移行後は状況が全く異なります。まず外部指導者は部活動のみの指導、すなわち生徒の普段の様子を見ていません。また、生徒同士の関係もあまり把握していないため、生徒個人に対する個別的な対応をすることが難しくなります。さらに、あくまで「その競技の指導者」であるため、生徒の人間性や態度などの技術以外の部分についてどこまで踏み込んで指導するかというのが問題になっています。

課題解決に向け参入する民間企業も

上述したように、部活動の地域移行にはまだまだ課題が山積しています。しかし、それは同時にビジネスで解決できる余地があることを意味しています。

すでに取り組みを始めている企業もあります。そこで今回は2つの企業の取り組みをご紹介します。

リーフラス株式会社

リーフラス株式会社は2013年から部活動支援事業を開始し、現在では1,300弱の学校の部活動を支援しています。

リーフラスは学校や教育委員会などの教育組織の部活動に関する多様なニーズに応え、教員の負担を軽減した安定的な部活動運営体制を実現するための総合窓口(=部活動コーディネーター)としての役割を担っています。

リーフラスは各教育組織の実情に合わせて適当なプロセスで部活動支援を行っています。具体的には、指導支援費用を無償とする代わりに学校の体育施設で放課後に児童向けのスポーツスクールを開講して「学校」「企業」「地域」の三者がそれぞれ利益を得る形式である「学校主導型」や地方自治体が事業計画を立て、公的予算を投入して取り組む「地方自治体主導型」などがあります。

また、リーフラスは部活動における民間企業のスポンサー制度の利用やプロスポーツ団体の活用など民間企業と連携した部活動支援や地域スポーツの活性化なども手掛けており、その支援の形はまさに多種多様ということができるでしょう。

今後の展望

部活動の地域移行は今後数年で急激に進展することが予想されます。それに伴って民間企業が地域移行に参入する機会も増加するでしょう。

現在は地域移行のコーディネーターとして参入する企業が多く見られますが、外部指導員の教育機会や、学校と外部指導者のコミュニケーションをサポートするICTツールの開発など、様々なビジネスチャンスが生まれることが予想されます。

地域移行の今後の動きに常に注目しておきましょう。

本サイトではスポーツやインターンシップに関するコラムを多数公開しています。そちらもあわせてご覧ください。

【参考記事】

▶スポーツ庁「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン(令和4年12月)」

▶リーフラス株式会社

SIUに無料会員登録する

無料会員登録していただいた学生の皆さまへは会員限定のお得な情報を配信いたします