【事例あり】スポーツマーケティングとは？スポーツ業界のマーケティング事例を紹介！

投稿日：2023年12月11日　更新日：2023年12月26日

コラム

スポーツビジネス関連

近年では、世界的な競技のイベントの開催や国際大会での日本代表選手の活躍、さらには海外のスポーツチームで活躍する選手の増加などにより、スポーツそのものだけでなく、スポーツビジネスにも関心が向けられています。その中でもとりわけ注目を集めているのが、スポーツマーケティングです。

そこで、今回はスポーツ業界でのマーケティング事例を紹介し、さらにはスポーツ業界でマーケティングを行う企業にも焦点を当て、スポーツマーケティングを解説します。

スポーツマーケティングとは？

スポーツマーケティングとは、スポーツを用いてマーケティングを行うことです。スポーツマーケッティングは、「スポーツ自体のマーケティング」と「スポーツを活用したマーケティング」に大別されます。

スポーツ自体のマーケティング

スポーツチームや大会など、スポーツに関わる企業や団体、興行の収益や価値を上げるために行われるマーケティングです。スポーツそのものの認知拡大や発展、新規来場者の増加、グッズの売り上げなど収益の増加を目的として行われます。

スポーツ自体のマーケティングでは、実施する目的は多岐にわたるため、それぞれの目的に対して効果的な方法を選択することが重要です。既にスポーツチームを応援しているファンのチームロイヤルティ向上を目的とした場合には、SNSを活用して試合開催日以外にもファンとのタッチポインを作る、ファン感謝デー等のイベントを開催するなどがあります。

また、スポーツそのものを対象としたマーケティングを行う場合、スポーツリーグやチームが主体となって行います。

スポーツを活用したマーケティング

一般企業の商品やサービスを対象としたマーケティングを行う際にスポーツを活用して行うマーケティング方法です。企業や商品の認知拡大、企業イメージの向上を目的に行われます。

例えば、国際大会で活躍するアスリートを起用し宣伝広告やイベント開催などがあります。また、国際大会やスポーツチームへのスポンサードもスポーツを活用したマーケティング手法の一つと言えます。

その他、近年ではジム型（24時間営業）のフィットネスクラブが急増しており、健康増進やヘルスケアの観点からもスポーツマーケティングが注目されています。スポーツに関わらない企業でも長く健康で生活するための運動の必要性を訴求し、継続的に運動できるような社会貢献が求められるようになっています。

上記の例からもわかる通り、スポーツを活用したマーケティングでは、一般企業が主体となり行われます。

スポーツマーケティングが重視されている背景

企業がスポーツマーケティングを行う背景には、スポーツが消費者に感動や憧れを持たせるコンテンツであるということが挙げられます。

1964年の東京オリンピックを契機に日本国内のマスメディアが発展を遂げ、国民の多くがスポーツに触れやすい環境となりました。スポーツがメディアによって消費者から注目されるようになると、企業もスポーツをマーケティングに活用するようになり、大会の冠スポンサーや試合中継の間にCMを放映する企業が増加しました。

1990年代になると、Jリーグの開幕などにより、スポーツを実際に実施する消費者が増加しました。メディア、主にテレビを通して見ていた憧れの選手をと同じスポーツ用品を使いたいという消費者の心理を突いたマーケティングも行われるようになりました。

その後、消費者の心理を利用する新たなマーケティング手段として、今日に至るまでスポーツマーケティングは重視されています。

スポーツ業界でのマーケティング　事例紹介

Amazon 命名権の新たな活用方法

世界最大のインターネット販売企業アマゾンが、2021年に北米アイスホッケーリーグ（NHL）に新規参入するシアトルを本拠地とする新チームのホームアリーナ命名権を取得しました。アマゾンはシアトルに本社を構えており、大企業が地域貢献などCSR活動の一環としてこのように地元施設に関わりを持つのは決して珍しいことではありません。

ただ、今回の取り組みはこれまでになく革新的なものでした。一般的に多くの企業は、命名権を利用して大きな露出効果を得ることができる施設の名前に自社または自社ブランド名をつけます。しかし、アマゾンはアリーナの名称を「Climate Pledge Arena」と命名しました。「Climate Pledge」とは、2019年9月に同社が社会や環境問題の改善に取り組む慈善団体と共同で宣言した自主誓約で、2040年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目指す、気候変動対策への方針を示すものです。

さらに、「Climate Pledge」の理念を体現するアリーナとして数々の施策を実施しています。2024年までにアルミや生分解性のペットボトルのみを使用した取り組みや会場内にゴミ箱は設置されず、生ごみを堆肥にする装置のコンポストとリサイクルボックスのみが設置、さらには施設内外のソーラー発電でアリーナの使用電力をまかなう予定を立てています。

このようなアマゾンの取り組みは、スポーツを通しての知名度向上だけでない活用方法を示すものとなり、今後新アリーナのが同社の環境保護活動の周知にどれだけの効果をもたらすのか注目されています。

FECU ターゲット層とリンクするアスリートを広告塔に起用

カリフォルニア州ロサンゼルスに拠点を置く信用組合、ファースト・エンターテインメント・クレジットユニオン（以下FEUC）は、2020年3月に地元のNBA（北米バスケットボールリーグ）チームであるロサンゼルス・レイカーズと複数面のパートナシップを締結しました。絶大な人気を誇るロサンゼルス・レイカーズとパートナーシップを締結することで、これまで以上に地元住民に対する自社の認知向上や好意形成を図ろうとしていると考えられます。

また、このパートナシップにおいて特徴的なのは、ロサンゼルス・レイカーズに所属するアンソニー・デービスとオフィシャルアンバサダー契約を締結している点です。FECUがアンバサダーを任命するのは同社において初めてのことです。夢を叶えるために逆風を受けながらも奮闘する姿は、ロサンゼルスで夢を叶えようとする人々が自己を投影する格好の存在です。FECUは、パートナーシップ発表に合わせて『ALL DREAMS APPLY HERE（全ての夢はここにある）』というプロモーション動画を公開しました。この中で「夢をあきらめる必要はない」と強く語り、その姿はFECUのターゲット層を象徴するアイコンにふさわしい存在となりました。

これは、アンソニー・デービスの気質やエピソードを含めたストーリーがあってこそ価値があるものとなります。ただ有名なアスリートを起用して看板をつくるのではなく、自社の顧客層の心理とリンクするアスリートを選び、有効的なマーケティングを行った事例と言えます。

Cadbury 損して得取れ”のスポンサーシップ戦略

新型コロナウイルスの感染拡大により、スポーツを取り巻く環境は大きな変化を余儀なくされました。数万人が集まり興奮を分かち合うという大前提が完全に覆されました。スポンサー企業も競技会場での看板露出やギブアウェイ、サンプリングなど、多数の来場者が予想される場合にこそ価値を持つキャンペーンを再考する必要がありました。

そのような状況下で英国の大手チョコレートブランドであるキャドバリーは、独自の観点から協賛権益の有効的な活用方法を見出しました。同社は2020年8月、イングランド・プレミアリーグのアーセナルとチェルシーとのパートナーシップ締結を発表しました。この際に発表されたアクティベーションの目玉は、スポンサーの協賛権益をローカルビジネスに譲渡するものでした。

アーセナルの本拠地、エミレーツ・スタジアムの道向かいにはファンから長年愛されてきた創業100年を超える老舗のカフェがあります。キャドバリーは、コロナウイルスの影響で客足が減り危機的状況にあるカフェを救うため、メールマガジン、デジタル広告、マッチデープログラムにおける露出枠を提供することを発表しました。また、チェルシーと連携して地元の起業家や中小企業を支援していくことを決めました。復興事業の活性化は地元経済の復興に不可欠であるとして、キャドバリーはチェルシーと協力してブランドマーケティングや販売促進などの経営戦略をオンラインセミナーを開催し、選ばれた3人の参加者にキャドバリーが保有するピッチサイドの広告枠を譲渡することが決まりました。

一見すると巨額な投資で得た権利を放棄しているようにも思えるアクティベーションですが、地域の問題を解決する企業姿勢をスポーツの協賛を通じてローカルにアピールすることで消費者の心を打ち、ブランドの差別化に大いに貢献するものとなっています。