当記事ではスポーツ業界で新たに働こうとしている方に向けて、採用されるために欠かせない志望動…
日本におけるスポーツビジネス・スポーツ業界の課題【3選】
昨今、日本ではスポーツが大きな盛り上がりを見せています。
2022年冬、カタールでサッカーの世界大会・ワールドカップが開催され、日本チームは死の組と呼ばれたグループステージを勝ち上がって決勝トーナメントに進出しました。また2023年春に開催された野球の世界大会であるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、大谷翔平選手を中心に侍ジャパンはスター軍団・アメリカを決勝で破り、第2回大会以来の優勝を果たすなど、スポーツの国際大会で日本中が熱狂したのは記憶に新しいのではないでしょうか。
このように、現在日本ではスポーツが大きな盛り上がりを見せていますが、この盛り上がりをビジネス=お金に換え、スポーツ界の更なる発展につなげられるかどうかは今後の取り組みにかかっているといっても過言ではありません。
スポーツ業界について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
近年新しく設置された「スポーツ庁」は、2025年までにスポーツ産業の市場規模を「15億円」に到達させることを目標にしていますが、達成のためにはスポーツ業界・ビジネスの大きな成長が必要不可欠です。
この記事では、現在日本のスポーツ業界・ビジネスが抱える課題・改善点を3つにまとめて解説していきます。
①経営における人材不足
現在、日本のスポーツチームの多くは親会社・オーナー企業の支援を受けて成り立っています。
そのため、チームの上層部には親会社の役員・社員であったり、その競技において実績のある人物が就任するケースも多く、業界外から新しい経営人材を登用するケースはそれほど多くはないでしょう。
プロスポーツチーム・クラブ経営においては一般企業同様、ビジネスの素養・経験値が問われます。
海外のプロスポーツ、特に世界的に認知されている「ビッグクラブ」では、トップ企業のビジネスマンをヘッドハンティングするなど、外部の優秀な人材を招聘し、トップに据える事例も数多く存在します。
経営人材の確保・流動性の面で日本と海外ではこのような違いがあり、今後日本のスポーツ業界が成長産業となっていくための一つの課題といえるでしょう。
スポーツ庁は課題解決に向け、スポーツ庁委託事業の名のもと、経営人材とチームとのマッチングプラットフォームを展開するなど、スポーツ業界の経営人材不足に国としても取り組みを始めています。
優秀な人材が増えることで業界の成長が加速し、ビジネスとしてスケールする=稼げる業界へと成長することで、更に優秀な人材・多様な人材がスポーツ業界を志す、といったような成長サイクルを作っていくことが中長期でのポイントとなるでしょう。
②収益体制のモデルチェンジ
ここ数年で、世界のスポーツビジネスは大きな変革を見せています。
安定した収益を獲得するための体制を築くには、一つのジャンル・コンテンツに固執することなく、収益体制を多角化させる必要があります。
ここではその一部について解説していきます。
スポーツビジネスの変遷
スポーツビジネスは大きく分けて3段階に分かれているといわれています。
一つ目はロサンゼルス五輪が開催された1984年から2004年までのモデルで、テレビやラジオなどのメディアを通じてライトなファンを獲得することに重きを置き、「スポーツビジネス1.0」と呼ばれていました。
二つ目は2005年から2018年までのモデルで、インターネットの普及によりテレビ離れが進んだことをきっかけにスタジアムに実際に来てもらう取り組みを行い、コアなファンを獲得することに重きを置いた「スポーツビジネス2.0」です。
そして現在も行われている「スポーツビジネス3.0」はスポーツの枠を飛び越え、スポーツを通じて社会問題の解決を図るなどスポーツの価値創造を進める動きや、スポーツ観戦と旅行を組み合わせたスポーツツーリングの動きなど、非スポーツ企業の業界参入などスポーツを「使う」ことでライトファンの増大を目指しています。
ここからも、先ほども触れたように、スポーツを「使う」ことのできる有能な経営者の存在が必要なことがうかがえます。
コロナウイルスの影響
スポーツビジネスを考える際、2020年に発生したコロナウイルスの存在を無視することはできません。
コロナウイルスの影響でスタジアムの来場者数が激減したことに伴い、入場料は大きく減少しました。その一方で在宅勤務の増加に伴い、人々の可処分時間(自由に使える時間)は増えたといえるでしょう。
つまり、その時間をスポーツ観戦やジムに通ったりランニングをしたりといった形で使ってもらえる可能性が増えたということで、スポーツ業界にとってはむしろチャンスだとも言えます。
また、コロナ禍を経て人々の健康志向は強まっており、今の状態はスポーツ業界においてはビジネスチャンスです。
一般的にスポーツ予算というとアスリートの育成に使われるイメージの方が多いと思いますが、それらの予算の一部を、一般の人がスポーツに触れる機会作りのために使っていく姿勢が大切だといえます。
アマチュアスポーツの活性化
日本のスポーツ業界と世界(ここでは主にアメリカ)のスポーツ業界を比較した際、市場規模の観点からみるとプロスポーツ以外でも大きな差が生まれています。
それは大学生が行うカレッジスポーツなど、アマチュアスポーツと呼ばれるジャンルです。
皆さんが思い浮かべるアマチュアスポーツだと、毎年春夏に行われる甲子園であったり、正月に行われる箱根駅伝などがあげられるでしょう。
しかし、これら人気アマチュアスポーツでも、収益化を重視する動きは少なく、ビジネスと呼べる状態にはなっていないのが現状です。
アメリカでは様々な大学スポーツの大会運営を主導し、放映権の管理も行っている全米体育協会(NCAA)という団体が存在しており、それらの活動で得た収益を学生への奨学金に回す形で、独自のビジネスモデルを形成しています。
対して日本の部活動は学校の課外活動という意識が根強く残っている状態で、部活動をめぐる会計が、学校の会計から独立してしまっているケースが多く、チームでグッズやチケットを売ったとしてもその消費税を払う仕組みが整っていないなど、収益化に向けた障壁は大きいです。
③スポーツ人口の増加
スポーツ業界の発展に不可欠なのは、人々にとってスポーツが身近な存在であり続けることでしょう。
しかし、少子高齢化が進む日本では基盤となるはずのスポーツ人口そのものが減少傾向であり、部活動に所属する人の数をデータ化し下図を参考にすると、今後より激しく減少することが見込まれています。
出所)実績値は日本中学校体育連盟加盟校数調査。推計値は日本中学校体育連盟加盟校数調査並びに国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)結果」を基に野村総合研究所が作成<スポーツ庁委託事業>
競技人口が減ると、各中学・高校での部活動存続が厳しくなることは言うまでもありません。ここ最近では、野球部がない学校というのも珍しくなく、他校との合同チームで出場するといったケースも散見されます。中高の部活動が減少してしまうと、新しくその競技を始めるきっかけが失われてしまい、その結果として競技人口が減ってしまうという悪循環に陥ってしまいます。
また、部活動という制度そのものにも問題は数多く存在します。
例を挙げると、部活動を担当する顧問は基本的にボランティアであり、指導の質を向上させるインセンティブがないことから、質の高いスポーツ教育を受ける環境として適切とは言えません。
また、部活動は学生であることが前提であるため、学校を卒業すると多くの人がスポーツに触れる機会を失ってしまう点も懸念されます。
そのため、部活動ではない形で、その競技を続けたいと考える人の受け皿になるような環境を整備する必要があるといえます。
部活動以外の地域のスポーツ運営は多くの場合、子供の親などが中心となるボランティア形式での運営が多く健全な形とは言えない環境です。
スポーツ関係者の間でスポーツをボランティア活動ではなく、ビジネスとして商業化していく意識が今後の日本のスポーツ業界発展のためには必要なのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
当記事ではスポーツ業界が現在抱えている課題について解説しました。
現在多くのスポーツにかかわる企業がこれらの課題の解決のために日々奮闘しております。
スポーツ業界に興味がある方はぜひ当サイトのコラムや、インターンシップ募集のページもご参照ください。