昨今、日本ではスポーツが大きな盛り上がりを見せています。 2022年冬、カタールでサッカー…

過去の成功例から考える、日本のスポーツビジネスの未来とは。
現在、WBCやワールドカップの盛り上がりもあり、スポーツビジネスは大きな注目を浴びています。一方で、コロナウイルスの流行など様々な社会現象の中でスポーツビジネスはその形態を変化させてきました。
当記事ではそんなスポーツビジネスの成功例について詳しく解説しつつ、今現在注目されているSNSを用いたスポーツビジネスについても解説していきます。
スポーツビジネスに興味のある方は是非ご覧ください。
スポーツビジネスとは
皆さんはスポーツビジネスという単語にどのようなイメージをもっておられるでしょうか。プロ野球やJリーグといったプロスポーツチームの運営をイメージされる方も多いのではないでしょうか。
もちろんプロチームの運営もスポーツビジネスの一部ですが、スポーツビジネスはもっと大きな範囲を指します。
スポーツビジネスとは言葉の通りスポーツにまつわるビジネスのことで、スポーツを通じて顧客に何らかの形で価値を提供して収益を得ていればスポーツビジネスといえます。
プロ野球を例にとっても、イベントの企画や施設の運営、グッズの販売などその業種は多岐にわたります。また現代では、SNSを使ったビジネスの影響力が年々強まり、注目されています。
スポーツビジネスの成功例
ここでは、スポーツビジネスの試行錯誤を経て、大きな収益につなげることに成功した事例として、プロ野球球団である広島東洋カープを紹介します。
広島東洋カープは広島を本拠地に持つプロ野球球団で、1950年に創設された歴史ある球団です。
上のグラフは、コロナ禍前10年間のカープの年度別観客動員数をグラフ化したものです。2013年から2019年にかけて観客動員数が大幅に増加していることがわかります。
このようなカープの大幅な人気向上にはいくつかの理由があります。
・マツダスタジアムのボールパーク化
現在メジャーリーグでは野球場の呼称がを「スタジアム」ではなく「ボールパーク」へと変化しつつあります。従来の競技要素が強かった「スタジアム」に対して、「ボールパーク」はその名の通り、野球以外のエンターテイメント性を重視した新たな野球場のスタイルです。試合がない日でも買い物や食事、レジャーを楽しむことができる賑わいや交流を創出するエリアに生まれ変わりました。
現在日本球界では、サウナがついている日ハムの新球場エスコンフィールドHOKKAIDOや、観覧車からの試合観戦が可能な楽天モバイルパーク宮城など、諸球場でボールパーク化が進んでいます。これら、「ボールパーク化」をいち早く行っていた球団がカープです。
2009年にオープンしたカープの本拠地、マツダスタジアムの特徴は、なんといってもその立地の良さです。新幹線の止まる広島駅から徒歩で通える圧倒的なアクセスの良さに加え、新幹線の車内からもマツダスタジアムがはっきりと見え、広島という都市のシンボルになっています。
加えてカープは寝転んで観戦できる席や砂被り席など画期的な席を次々導入、また子供用には遊具を設置したり、夏にはお化け屋敷を併設するなど、野球にあまり興味がない人でも飽きずにいられるような工夫がたくさん盛り込まれています。
加えて、マツダスタジアムは球場内の飲食店が一括経営です。そのため、球場全体が一つの売り場となっており、効率的な店舗の設置が可能になっています。また、ビールの売り子のユニフォームをすべて同じにすることが可能で、これら諸要素がマツダスタジアム独特の選手とファンの一体感を生み出しているのでしょう。
・地域密着
カープのスポーツビジネスの大きな特徴として挙げられるのが地元密着です。筆者は実際に何度かマツダスタジアムまで行ったことがありますが、カープの試合日になると町ではカープのユニフォームを着た人がたくさんおり、町全体がカープ一色になります。また、広島市内の飲食店の店員もカープのユニフォームを着ていたり、赤色のコンビニがあったりと、まさしく「カープ一色」と言えるでしょう。
上の図は、各都道府県の中で最もファンが多い球団を色で塗り分けたものです。左は2008年、右は2018年のものですが、2008年は広島県ではもちろんカープファンが一番多いものの、ほかの中国地方の県は阪神や巨人のファンのほうが多い状態でした。
しかし、地元企業との協力や中国地方全体をターゲットにした地域貢献活動などの結果、中国地方全域にカープの影響力を拡大させることに成功したことが、2018年の図からわかります。
・「カープ女子」の誕生
2014年にカープの女性ファンを指す「カープ女子」が流行語大賞を受賞したことが象徴するように、カープの人気拡大には女性ファンの増加が大きく影響しています。カープは昔から、レディースカープという女性のためのファンクラブを用意しているなど女性ファン獲得には熱心な球団です。しかし、「カープ女子」は広島にゆかりのない関東の人間が多数を占めています。
なぜ「カープ女子」は関東を中心に急激に増加したのでしょうか。
一つその理由に挙げられるのが、グッズ販売です。カープは親子4代にわたる女子を顧客にすると明確に規定し、各世代の女子が喜ぶ、それぞれに相応しいかわいいグッズを多数販売しました。
それを可能にしたのは、カープ独自のグッズ戦略です。特徴としては、それまでの他企業にグッズ製作を依頼するシステムを廃止し、グッズの自主製作、直接販売を新たに行っている点にあります。そのため、他球団に比べ、カープは様々な種類のグッズを迅速かつ大量に生産することができ、女性向けグッズも多数販売されました。グッズのは年間で1000アイテムを超える種類が存在します。
結果として、カープの年間グッズ売り上げは50億円を超え、売り上げの三分の一を占める驚異的な数字をたたき出しました。ホーム球場に行かなくてもグッズを購入し、関東のビジタースタジアムで気軽に応援できる状態を作ったことで、多くのファンを生み出すことに成功したのではないでしょうか。
SNSを中心とした現代のスポーツビジネスの具体例
ここではSNSを用いた新たなスポーツビジネスの成功例として、プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」に所属する川崎ブレイブサンダースを紹介します。
川崎ブレイブサンダースは2018年にDeNAが東芝から経営権を買収し、SNSを用いたデジタルマーケティングに力を入れると、ホームゲームの来場者数は1.5倍に増加、21年6月に開催された「B.LEAGUE AWARD SHOW 2020-21」では、ソーシャルメディア最優秀クラブを受賞するなど、現在Bリーグの中でトップクラスに人気のあるチームの一つです。
YouTube
ブレイブサンダースは16年9月にYouTubeアカウントを開設した当初は、選手のプレー集など他チームと似た動画にとどまり、チャンネル登録者も3000人程度しかいませんでした。19年8月からデジタルマーケティングに力を入れ、今までとは打って変わって選手のルーティン動画や、○○してみたといった企画挑戦型の動画を投稿し始めました。すると登録者数は右肩上がりに上昇し始め、現在の登録者は15万人を超えています。
ここまで爆発的に登録者を増加させることができた要因としては以下の点があげられます。
- 当時バスケ系の競合YouTubeは少なく、ブルーオーシャンであった。
- バスケに興味のない人でも動画を見てもらえるように、撮影・編集担当者を雇って質の高い動画を提供した。
- UUUMと業務提携を結んだため、有名ユーチューバーとのコラボが可能だった。
- 選手が協力的だった。
さらに、10万人突破記念で有名ユーチューバーとのスペシャルマッチを去年の8月に開催した際には、YouTube Liveでの同時接続数32万超、動画の再生数は489万回超と、日本スポーツ界における配信企画として驚異的な数字を叩き出しました。
2022年現在はバスケ系の競合も多く、「第二のブレイブサンダース」になるのは難易度が高いことからも、ブルーオーシャンだった時代に大きな投資を行ったブレイブサンダースの先見の明がうかがえます。
TikTok
TikTokは15秒から1分ほどの短い動画を作成/投稿できる、短尺動画プラットフォームです。
YouTubeと同様、新規ファン層開拓が見込めるプラットフォームですが、TikTokは企画系の動画よりも、音楽に乗せた短い動画が主流で、ユーザーの多くがZ世代であることも大きな特徴です。
バスケは試合の中で、バスケを知らない人でもインパクトのあるスーパープレイが生まれやすいため短い動画が作りやすいです。ブレイブサンダースはこの特徴を生かし、Z世代に人気のあるインフルエンサーとコラボするなど様々な施策を重ね、若者中心に話題性の最大化を狙っています。
@brave_thunders
上の動画からもわかると思いますが、ブレイブサンダースはTikTokではシンプルな動画を創ることを心がけ、日本語がわからない海外の人にでも届くような動画づくりを目指しています。
TikTokの特徴として、ユーザーの画面にはおすすめの動画が連続で再生されるため、検索しなくてもブレイブサンダースの動画がユーザーに届く可能性があることです。そのため、再生回数を重要な指標として、TikTokの複雑なアルゴリズムを分析しながら、再生回数を稼げるように日々改善を繰り返しているそうです。
まとめ
当記事では、スポーツビジネスの成功例として「広島東洋カープ」と「川崎ブレイブサンダース」を紹介しました。
スポーツビジネスは時代に合わせてその形を変えていきます。そのため、当時正解であった施策でも、今正解とは限らない難しいビジネスです。その一方で、スポーツに何かしらの形でかかわることは、とてもやりがいのある仕事だといえるでしょう。
当サイトでは、スポーツ業界に関するコラムも多数掲載しておりますので、興味がある方は是非ご覧ください。
〈参考記事一覧〉
なぜカープは東京から「お金を奪える」のか(ライブドアニュース)
広島カープのスポーツビジネス|球界最先端のビジネスモデルを展開(HALF TIME)